地域医療連携のピットフォールとブラックホール 第一回勉強会

2016年12月1日午後6時より、大同病院主催の「地域医療連携のピットフォールとブラックホール」というテーマでのセミナーに講師として、弁護士伊東亜矢子、弁護士浅野了一が参加しました。

医師の方、看護師の方、介護職に従事されている方にご参加いただき、事例をグループごとに検討していただくような、グループワークの形での勉強会を進めさせていただきました。 沢山の方にご参加いただき、大変盛況でした。

今回勉強会で取り上げさせていただきました事例は、ご参加いただいたみなさまにとっては、いつでも起こりうる事例であり、現実にどう対応したらいいのかを真剣にご検討いただきました。

勉強会で取り上げさせていただきました事例を、一部抜粋してご紹介させていただきます。

【事例】転落事故のケース

<前提条件>

佐藤さんは、介護施設Aにて介護サービスを利用しておりました。

介護サービスでは、介護施設側が送迎を行い、佐藤さんは食事の提供や入浴介助を受けていました。

利用契約として、佐藤さんの病状が急変した場合などは、家族に連絡するとともに、主治医に連絡するような内容が盛り込まれておりました。

<事故発生>

ある日、いつも通り佐藤さんが介護サービスから付属の宿泊施設に移動する際、送迎車両に乗車しましたが、その後職員が見ていないところで自分で降車しようとして、転倒してしまいました。

その際、看護師2名が状況を確認し、腫れ等の症状がなかったため、念のため家族に連絡し、様子を見ることとしました。

しかし、翌朝、佐藤さんが強い痛みを訴えたため、病院で検査したところ、大腿骨頸部骨折の診断を受け、手術することになりました。

<事故発生>

グループワーク:次のうち正しいものはどれでしょうか?

①利用者が勝手な行動を取らないよう職員が常時見守りすることを怠ったため、施設の責任
②事故発生後、看護師2名が状況を確認したが、異常がなかったため、施設側の責任はない
③施設側に責任があるかどうかは、事故発生時に佐藤さんの痛みの訴えの状況など、具体的な経過によって判断される

<正解>

<理由>

①について

常時見守ることが一番望ましいですが、施設としても限られた人数で対応する中で、全ての利用者を必ず常時見ていなければならない責任があるということにはなりません。

本件の裁判では、職員は他の方の乗車を介助する間、すでに乗車し着席していた佐藤さんから目を離したことが相当な注意を欠くものとはいえません

また、そのごく短い間に佐藤さんが自分で降車しようとしたが予測できたとはいえないと判断されます。

②について

本件の裁判では、事故後、佐藤さんの痛みの訴えが続いており、宿直担当職員が午後7時ころと午後11時ころの二度にわたってトイレに行った佐藤さんが腰の痛みを訴えたことを認識し、管理者に報告していたと認定した上で、おそくとも午後7時頃までには医師に相談するなどすべきであったと判断されました。

こういった介護施設で起こりうる事例を2例ほど取り上げさせていただき、弁護士としての法律的な問題点などについて、解説させていただきました。

今後も、第二回、第三回と勉強会を続けていく予定です。