医療事故

CASE

手術の合併症により重篤な後遺障害が残ってしまった患者さんのご家族から「手術ミスがあったのではないか」との疑問が呈されたことを受け、病院において自らの見解を整理してお伝えするための説明会を行い、その後医療ADRを利用して円満な和解解決に至ったケース

※プライバシーに配慮し、実際の相談ではなく標準的なサンプル例となっております。

手術の合併症により重篤な後遺障害が残ってしまった患者さんのご家族から、「手術のミスでこのようなことになってしまったのではないか」との疑問が呈された件について、病院からご相談がありました。

病院としては、どんなに注意深く手術を行っても一定割合で生じてしまう合併症であり、何かミスがあったというわけではないとの見解でしたが、ご家族は、術前に説明をした医師ではなく若い医師が執刀したということは練習台にされたのではないか、術前の説明ではそんな危険な手術だとは一言も聞いていなかった、などと述べ、あくまでミスがあったはずだとの主張でした。

このケースでは、まず、病院側の考えをご家族側へ正しく伝えるところから始めるべきだと考え、ご家族側から疑問に思うことを書面で挙げてもらい、病院側にはその回答を準備してもらった上で、ご家族を病院に招いての説明会を行いました。

ことに、医療の素人には手術の内容や具体的な経過は分かりにくいものですので、病院側には経過を分かり易く図示した資料を準備してもらいました。当日は私の司会のもと説明会を進行し、2時間ほどをかけ、病院側の考えについては伝えることができました。

もっともご家族としてはなお、病院側の説明をそのまま受け入れることはできないとのことであったため、私からは、医療ADRにより第三者の意見を聞きながら話合いを行うことを提案しました。

ご家族もこれを了承されたので、医療ADRの申立てを行い、既に説明会の時に準備していた資料をそのまま用いて医療ADRのあっせん人に手術経過の説明を行いました。きちんと準備を整えていたのでこの点についてはあっせん人の理解を得ることができました。

一方、術前の説明においては、どんなに注意しても重篤な後遺障害が残ってしまうような合併症を完全に避けることはできないことがきちんと患者さん側に伝わっていたとはいえないとの指摘があり、3回の期日を重ねて話合いを行った上で、最終的には説明不足の点についての解決金を支払って和解に至りました。

申立てから半年以内での解決であり、年の単位で時間を要する裁判よりはずっと早い解決となりました。

ご家族の訴えを放置せず、きちんと資料も準備して対応したことで、早期の解決に至ったケースとしてご紹介致します。