診療費の回収

CASE

診療に対する疑義があるため入院費用を支払わないと述べる患者さんに対し、直ちに法的措置による未収金回収を行うのではなく、患者さんの疑義に対する病院の見解を整理して伝え、医療ADRの利用によって患者さんの思いも十分聴取して話合いを重ねた結果、早期の和解解決に至ったケース

※プライバシーに配慮し、実際の相談ではなく標準的なサンプル例となっております。

病院から患者さんが入院費用を支払わないので法的措置をとれないか、とのご相談がありました。

まずは事情を伺うと、ある疾病により入院し、手術を受けた患者さんについて、

・術後の入院中に感染症が生じ、予定よりも入院が延びてしまった
・患者さんは「感染症が生じたのは病院のせいだから入院費用は一切支払わない、それどころから慰謝料を支払ってもらいたい」と仰っている

とのことでした。

このような場合、単に未収診療費について法的措置をとり、強行に回収をかければよいというものではなく、感染症が生じた原因、病院の管理に問題はなかったのか、というところから確認する必要があります。

またそもそも「法的措置」は万全のものではなく、仮に病院の請求どおり未収診療費の支払を命じる判決を勝ち得たとしても、差し押さえるべき財産が不明であれば、「絵に描いた餅」にとどまってしまうこともあります。

上記のケースではまず病院の方で感染症が生じた原因について整理し、病院としては管理を尽くしていたのだけれども防ぎ得なかったものであるという結論に達しました。そこで患者さんに対しそのことを伝え、入院費用については全額を支払って欲しい旨要請しましたが、患者さんの納得を得ることはできませんでした。

そこで医療ADRを申し立て、第三者であるあっせん人を通じて病院の考えをさらにお伝えするとともに、患者さんの思いも十分聴取頂きました。

患者さんとしては、「予定より入院が延びたことで楽しみにしていたお孫さんの結婚式に出ることができなかった」などの思いを吐露され、当初は入院費は払わないし慰謝料を払って欲しいとの主張を繰り返されましたが、期日を重ねるごとに気持ちも和らぎ、最終的には、もともと予定された期間分の入院費用は患者さんが支払い、残りの入院費用と慰謝料についてはお互いに請求しないということで和解が成立となりました。

いきなり裁判という強行手段に出ていた場合、医療過誤による反訴請求がなされ、係争状態が何年も続いた可能性があったケースにおいて、第三者を介した話合いによる円満解決がはかれたものとしてご参考に紹介致します。